FC基礎知識 法定開示書面 2026年版 2026年10月13日

フランチャイズの法定開示書面とは
契約前に受け取る書面の読み方と確認ポイント【2026年版】

この記事の結論

  • 法定開示書面は、中小小売商業振興法第11条にもとづき、本部が契約の前に加盟希望者へ渡して説明しなければならない書面です。
  • 飲食のフランチャイズも要件にあてはまれば対象で、本部の財務、加盟店数の推移、ロイヤリティ、契約の更新や解除など、書く事項が決まっています。
  • 受け取ったら、お金の計算方法、契約の終わり方、本部の実態の3つを、契約書や説明会の話と照らし合わせて確かめます。

フランチャイズに加盟するとき、契約書にサインする前に受け取るのが「法定開示書面」です。本部の財務や加盟店の数の動き、お金と契約の条件がまとめて書かれていますが、項目が多く、どこから読めばよいか迷いがちです。本記事では、法律・業界の自主基準・公正取引委員会のガイドラインが何を求めているかを確かめたうえで、書面のどこをどう読むかを整理します。

法定開示書面とは|だれが・いつ・何のために渡すのか

法定開示書面とは、中小小売商業振興法第11条にもとづいて、フランチャイズ本部が加盟を希望する人と契約を結ぶ前に渡し、内容を説明しなければならない書面です。加盟金やロイヤリティ、契約の期間・更新・解除、本部の財務や加盟店の数の動きなどが書かれています。加盟する人が、本部の中身と契約の条件を理解したうえで、契約するかどうかを決められるようにするためのものです。

法律の条文には「法定開示書面」という言葉は出てきませんが、業界ではこう呼ばれています。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の会員の本部では、「フランチャイズ契約の要点と概説」という名前の書面として作られています。

対象になる本部(特定連鎖化事業)

法律の対象は「特定連鎖化事業」と呼ばれる事業です。中小企業庁は、次の6つにあてはまる場合に対象になると説明しています。

飲食のフランチャイズも対象

法律の名前に「小売」とあるので、飲食店は関係ないと思われがちです。しかし中小企業庁は、この法律の「中小小売商業者」には飲食も含まれると説明しています。中小企業庁のパンフレットでも、対象を「いわゆる小売・飲食のフランチャイズ・チェーン」としています。

ただし、飲食店などで商品の供給が契約の条件になっていない場合のように、6つの要件にあてはまらないときは対象外です。その場合でも、公正取引委員会の「フランチャイズ・ガイドライン」はすべての業種のフランチャイズに適用され、契約前に大事なことを書面で示し、説明することが望ましいとされています。

書面を渡さない本部はどうなるか

対象の本部が法律に従っていないときは、国(主務大臣)が勧告し、それにも従わなければ、その旨を公表できます(同法第12条)。中小企業庁は、本部が正しく開示・説明しているかを確かめるため、法律にもとづく報告の求め(報告徴収)も行っています。一方で、書面を渡す義務そのものに罰則は定められていません。だからこそ、受け取る側が書面を求め、中身を読むことが大切です。

書面は「契約の前」に、時間をとって読む

法律は、契約を結ぶ前に(あらかじめ)書面を渡して説明することを求めています。公正取引委員会も、加盟希望者が十分に検討できる期間を置いて書面を渡し、説明することが望ましいとしています。JFAは自主基準で、会員の本部が契約書を渡してから契約するまでに7日間以上の熟考期間(よく考えるための期間)を置くことにしています。契約の当日に初めて書面を見る、という進め方は避けましょう。

書面に書かれていること|23項目を6つのまとまりで読む

書面に書く事項は、法律と施行規則(経済産業省令)で決まっています。中小企業庁のパンフレット「フランチャイズ事業を始めるにあたって」(2025年6月)は、これを23項目に整理しています。そのまま並べると読みにくいので、ここでは6つのまとまりに分けて紹介します。

まとまり主な記載事項読むときのポイント
本部の概要名称・住所・従業員数・役員、資本金と主な株主、子会社、ほかの事業、フランチャイズ事業を始めた時期どんな会社が、いつから本部をしているか
本部の実態直近3事業年度の貸借対照表・損益計算書、直近3事業年度の加盟店の店舗数の推移、立地が似た加盟店の直近3事業年度の収支、直近5事業年度の契約に関する訴訟の件数1年だけでなく、3年・5年の流れで見る
加盟するときのお金加盟金・保証金・備品代などの金額(算定方法)、性質、払う時期と方法、返還の有無と条件返ってこないお金と、返る条件
定期的に払うお金ロイヤリティなどの額、または売上・費用などの根拠を明らかにした算定方法、売上金の送金、貸付けや相殺の利率、契約違反のときの支払い「率」より「何に掛けるか」
商品・指導・お店販売・あっせんする商品の種類と代金の決済方法、研修の有無と内容、経営指導の方法と回数、店舗の構造や内外装の義務、営業時間・営業日・休業日自分で決められることと、決められないこと
契約と制限契約期間、更新の条件と手続き、解除の要件と手続き、解除のときの損害賠償金、近くへの出店の規定(テリトリー)、契約後の競業禁止、守秘義務、商標・商号と使う条件契約の終わり方と、終わったあとの制限

※中小企業庁のパンフレット(2025年6月)の別表1をもとに整理しています。正確な項目名は、パンフレットや法令で確認してください。

2022年4月から「似た立地の加盟店の収支」も

2021年4月の施行規則の改正で、周辺の人口や交通量など立地条件が似た加盟店の、直近3事業年度の収支が記載事項に加わりました(2022年4月1日から)。売上高・売上原価・ロイヤルティ・人件費・販売費及び一般管理費などに分けて書き、似ていると判断した根拠も示します。

ただし、これは自分の店の売上予測ではありません。公正取引委員会は、この収支を示すときは、予想売上ではないことが加盟希望者に十分に理解されるよう対応する必要があるとしています。自分の候補地の条件とどこが似ていて、どこが違うかを確かめる材料として使いましょう。

JFAの開示自主基準と公取委のフランチャイズ・ガイドライン

法律の書面に加えて、業界団体のJFAの開示自主基準と、公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインが、「何を開示するべきか」「どんな説明が問題になるか」を示しています。法律の対象かどうかがはっきりしない本部を比べるときにも、物差しとして使えます。

JFAの開示自主基準

JFAは1999年5月に、会員の本部が守る基準として開示自主基準を定めました。中小小売商業振興法の対象にならない本部も対象にしている点が特徴です。会員の本部には、自主基準を書面にした「フランチャイズ契約の要点と概説」をつくって加盟希望者に事前に説明・配布するよう働きかけ、JFAへの提出を義務づけています。JFAのウェブサイトでは、一部の本部の情報開示書面が業種別に公開されています(各本部が提供したものをそのまま載せており、記載内容に責任は持たないと注意書きがあります)。

公取委のフランチャイズ・ガイドライン

公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(2002年公表、最新の改正は2021年4月28日)は、加盟者を募集するときに開示が望ましい事項として、次の8つを挙げています。

問題になる説明の例|売上予測の示し方など

ガイドラインは、加盟者の募集で大事なことを十分に開示しなかったり、うそや大げさな説明をしたりして、実際より著しくよい条件だと思わせて加盟させることは、独占禁止法の「ぎまん的顧客誘引」にあたるとしています。判断のときに見る点として、次のような例を挙げています。

予想売上を示す場合は、似た環境にある既存店の実績など根拠のある事実と、合理的な算定方法にもとづき、その根拠と方法を加盟希望者に示す必要があるとされています。既存店の平均などからつくった「モデル収益」は、予想売上ではないと分かるように示す必要があります。契約したあとについても、正当な理由のない仕入先の制限、仕入数量の強制、契約にない新しい事業の導入を押しつけること、必要な範囲を超える契約終了後の競業禁止などが、問題になりうる例として挙げられています。

加盟条件を書面で確かめたい方へ

猫家FCは加盟金150万円(保証金込み)、ロイヤリティ売上の4%(最初の3店舗は3%)。
物件・設備費は別途です。加盟条件を確かめたうえで、ご検討ください。

書面のどこを見るか(1)お金と契約の終わり方

お金の項目では、ロイヤリティの算定のもとになる数字、加盟金・保証金が返る条件、売上金の送金と相殺のしくみを先に読みます。契約の項目では、期間・更新・中途解約の違約金とテリトリーです。どれも、加盟してから「思っていたのと違う」となりやすいところです。

ロイヤリティは「率」より「何に掛けるか」

書面には、定期的に払うお金について、額、または算定に使う売上・費用などの根拠を明らかにした算定方法が書かれます。同じ「売上の○%」でも、何を売上に含めるかで金額は変わります。中小企業庁のパンフレットや公正取引委員会のガイドラインは、売上総利益に率を掛ける方式で、廃棄した商品の原価をどう扱うかによってロイヤリティの額が変わる例を挙げています。中小企業庁は、計算方法を完全に理解できるまで説明を受けるよう呼びかけています。ロイヤリティの種類と考え方はフランチャイズのロイヤリティとはで解説しています。

加盟金・保証金が返る条件

加盟するときに払うお金は、金額だけでなく性質(何の対価か)と返還の有無・条件が書かれます。中小企業庁は、物件が決まる前に契約して加盟金などを払い、お店を開けなかったのに返してもらえなかった、というトラブルを紹介しています。開店できなかったとき、途中でやめたときに、何がいくら戻るかを書面で確かめましょう。初期費用の全体像はフランチャイズ開業にかかる全コストにまとめています。

売上金の送金・相殺・貸付け

売上金をいったん本部に送るしくみや、本部との貸し借りを差し引き(相殺)する勘定がある場合は、その時期・方法や利率も書面に書かれます。中小企業庁は、相殺の勘定が複雑な場合や、残高が足りないときに自動で融資される(利息がつく)しくみがある場合は、納得できるまで説明を受けるよう呼びかけています。

契約期間・更新・解除・違約金

契約の項目では、契約期間、更新の条件と手続き、解除の要件と手続き、解除のときの損害賠償金の額や算定方法を読みます。公正取引委員会は、中途解約の条件があいまいだと、加盟者はいくら払えばやめられるか分からず、実際にはやめにくくなるとして、契約で明確にして十分に説明することが望ましいとしています。契約書の条項ごとの読み方はフランチャイズ契約で確認すべき10のチェックポイント、やめるときの流れはフランチャイズの解約・中途解約の流れをご覧ください。

テリトリーと、契約が終わったあとの制限

本部が近くに同じ店や似た店を出す(出させる)ことができるかどうかの規定と、契約が終わったあとの競業禁止(同じような商売をしない約束)や守秘義務の有無・内容も書かれます。中小企業庁によれば、テリトリー権(ほかの同じチェーンの店が出ない範囲)を認めない契約もあります。認められない場合は、近くへの出店計画まで聞いておきましょう。

書面のどこを見るか(2)本部の財務・店舗数・訴訟

本部の実態は、直近3事業年度の貸借対照表と損益計算書、直近3事業年度の加盟店の店舗数の推移、直近5事業年度の訴訟の件数で読みます。1年だけを見ず、3年・5年の流れで見ることが大切です。

財務は「成長性・収益性・安全性」で見る

本部の貸借対照表(会社の財産と借金のようす)と損益計算書(1年のもうけのようす)は、2002年4月の改正で記載事項に加わりました。JFAは、本部の財務を成長性・収益性・生産性・安全性の4つの面から総合的に見ることをすすめ、安全性の代表的な指標として自己資本比率や流動比率などを挙げています。あわせて、始めたばかりの本部は収益性や安全性が低めに出やすいなど、本部の成長の段階によって見方が変わることにも注意をうながしています。読み方に自信がなければ、税理士などに一緒に見てもらいましょう。

加盟店の数は「増えた数」と「減った数」を両方見る

店舗数の推移は、各事業年度末の店舗数だけでなく、新しく加盟した数、契約を解除された数、更新された数と更新されなかった数まで書かれます。中小企業庁は、出店と退店の数がフランチャイズ事業の将来性などを判断する材料になるとしています。増えた数が多くても、やめる店も多ければ、その理由を本部に聞いてみましょう。

訴訟は「どちらが訴えたか」も見る

訴訟の件数は、本部が加盟者(元加盟者)を訴えた件数と、加盟者(元加盟者)が本部を訴えた件数に分けて書かれます。件数があれば、どんな争いだったのかを本部に聞いてみましょう。

書面を受け取ったあとの進め方

やることポイント
1. 書面と契約書・説明資料を照らし合わせる説明会で聞いた話と、書面の数字・条件が同じか
2. 分からない点を書き出して質問する答えはメモやメールで残す
3. 既存の加盟店の話を聞く書面の数字だけでは分からない実際のようす
4. 専門家に相談する契約は弁護士、財務やお金の計算は税理士など
5. 急がされても署名しない納得できるまで契約しない

中小企業庁も、既存の加盟店や専門家から話を聞くこと、どんな小さな疑問も本部に質問して理解することを呼びかけています。本部の選び方の全体はうなぎフランチャイズ本部の選び方でも整理しています。

猫家FCの場合

猫家は、千葉県四街道市にある関東風(蒸してから焼く)のうなぎ屋です。猫家FCの加盟金は150万円(保証金込み)で、物件・設備費は別途です。ロイヤリティは売上の4%(最初の3店舗はモデルケースとして3%)です。うなぎ屋に必要なことは研修とマニュアルでお教えし、うなぎの仕入れは本部が担います。

猫家FCにはまだ加盟店がなく、最初の3店舗を募集しています。そのため、加盟店の店舗数の推移や加盟店の収支のような実績の数字はありません。加盟金やロイヤリティ、契約の条件など気になる点は、フォームからご相談ください。

まずは、お気軽にご相談ください

猫家FCは自分のうなぎ屋を繁盛させたい方を募集しています。
加盟条件について、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

法定開示書面は、いつもらえますか?
契約を結ぶ前です。中小小売商業振興法第11条は、対象の本部に、契約の前に書面を渡して説明することを求めています。JFAは自主基準で、会員の本部に7日間以上の熟考期間を置くよう定めています。契約の当日ではなく、読む時間をとれる時期に受け取りましょう。
飲食店のフランチャイズも対象ですか?
対象です。中小企業庁は、この法律の小売業には飲食も含まれると説明しています。ただし、商品の供給が契約の条件になっていないなど、要件にあてはまらない場合は対象外です。その場合も、公正取引委員会のガイドラインはすべての業種に適用されます。
書面を渡さない本部はどうなりますか?
対象の本部が法律に従わないときは、国(主務大臣)が勧告し、従わなければ公表できます(同法第12条)。書面を渡す義務そのものに罰則はないため、書面を求めても出てこない本部とは、契約を急がないことが大切です。
書面にある加盟店の収支は、自分の店の売上予測ですか?
違います。立地条件が似た加盟店の、過去3事業年度の収支です。公正取引委員会も、予想売上ではないことが十分に理解されるよう対応する必要があるとしています。予想売上を示されたら、根拠と算定方法を聞きましょう。
書面で先に読むべきところはどこですか?
ロイヤリティの算定方法、加盟金・保証金の返還の有無と条件、契約期間・更新・解除と違約金、テリトリー、本部の3年分の財務と加盟店数の推移です。分からないところは質問し、答えを記録に残してください。