FC基礎知識 本部の倒産・M&A 2026年版 2026年10月25日

フランチャイズ本部が倒産・撤退・身売りしたら
加盟店の契約・保証金と加盟前に確かめること【2026年版】

この記事の結論

  • 本部が倒産や身売りをしても、契約がすぐ自動でなくなるとは限らず、手続きの種類と契約書の中身で扱いが変わります。
  • 破産や民事再生では、保証金を返してもらう権利はほかの債権者と同じ立場になりやすく、全額戻るとは限りません。
  • 加盟前に、本部の財務、地位の譲渡や契約の終わり方の条項、商標の名義、仕入れとシステムの代わりを確かめておきます。

フランチャイズは、本部の商標やノウハウ、仕入れのしくみを使って営業する事業です。だからこそ、本部が倒産したり、事業から撤退したり、ほかの会社に身売りされたりしたとき、加盟店は大きな影響を受けます。本記事では、法律の一般的なしくみをもとに、契約・保証金・商標・仕入れ・システムがどうなりうるかと、加盟前に確かめておきたいことを整理します。個別のケースの判断は、弁護士にご相談ください。

本部の倒産・撤退・身売りで加盟店に起きること

本部が倒産しても、身売りされても、フランチャイズ契約がその日に自動でなくなるとは限りません。どうなるかは、①破産・民事再生・株式譲渡・事業譲渡などどの手続きがとられたか、②契約書に何が書いてあるか、の2つで大きく変わります。まずは全体像を表で整理します。

本部に起きること契約はどうなるか(一般的なしくみ)加盟店が気をつけること
破産裁判所が選んだ破産管財人が、契約を続けるか解除するかを選べる保証金はほかの債権者と同じ立場になりやすい
民事再生本部が事業を続けながら再建をめざし、契約を続けるか解除するかを選べる返済は再生計画の定めによる
株式譲渡株主が変わるだけで本部の会社は同じ。契約は原則そのまま経営方針や条件の見直し
事業譲渡契約をほかの会社に移すには、原則として加盟店の承諾が必要契約書に前もって承諾する条項がないか
会社分割分割の契約や計画に従って、ほかの会社にまとめて引き継がれる引き継ぎ後の条件
撤退(事業の終了)契約書の終了・解約の条項による商標の使用、仕入れ、競業禁止の扱い

※裁判所、法律の条文、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」の説明をもとにした一般的な整理です。実際の扱いは契約の内容や時期で変わります。

いざというときは、「契約の相手はだれになるのか」「お金はどうなるのか」「お店の看板と仕入れは続くのか」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

本部が倒産したとき|契約と保証金はどうなるか

倒産の手続きのうち破産では、裁判所が選んだ破産管財人が本部の財産をお金に換えて、債権者に分けます(配当)。フランチャイズ契約のようにお互いの義務が残っている契約は、原則として管財人が「続ける」か「解除する」かを選べます。民事再生では、本部が事業を続けながら再建をめざし、契約を続けるかどうかも原則として本部の側が選べます。

破産のとき

破産法は、お互いにまだ義務を果たし終えていない契約について、破産管財人が契約を解除するか、続けて相手にも義務を果たすよう求めるかを選べるとしています(破産法第53条第1項)。加盟店の側は、期間を決めて「どちらにするか答えてほしい」と求めることができ、その期間内に答えがなければ、解除したものとみなされます(同条第2項)。また管財人は、裁判所の許可を得て、商標権を売ったり、事業をほかの会社に譲ったりすることもできます(同法第78条第2項)。

民事再生のとき

民事再生法にも、同じように本部の側が契約を解除するか続けるかを選べるしくみがあります(民事再生法第49条第1項)。加盟店が期間を決めて答えを求め、期間内に答えがなければ、本部の側が解除する権利を放棄したものとみなされます(同条第2項)。つまり、破産とは逆に、契約は続く方向になります。裁判所によれば、民事再生は、本部が立てた再生計画案に債権者の多数が同意し、裁判所が認めれば、その計画に従って返済していく手続きです。

保証金は「ほかの債権者と同じ立場」になりやすい

本部に預けた保証金を返してもらう権利は、倒産の手続きが始まる前の原因で生じたものなので、原則として、破産では破産債権、民事再生では再生債権として扱われます。ほかの取引先と同じ立場で、配当や再生計画で決まった割合でしか戻らないことがあります(破産法第2条第5項・第100条、民事再生法第84条・第85条)。

一方で、加盟店が本部に払うお金(未払いのロイヤリティや仕入れ代金など)がある場合は、保証金を返してもらう権利と差し引き(相殺)できる場合があります(破産法第67条など)。ただし、相殺には細かい条件や制限があります。また、加盟金は契約で「返さない」と定めるのが一般的とされており(JFAの用語集)、本部の倒産で戻ることは期待しにくいお金です。

お店の物件や設備の契約にも目を向ける

JFAは、店舗の賃貸借契約や設備のリース契約に「フランチャイズ契約が終了した場合、本契約も当然に終了する」といった特約があると、リースの残りの全額や高額な違約金を払う義務が生じることがあると注意をうながしています。本部の倒産でフランチャイズ契約が終わったとき、物件や設備の契約がどうなるかも、あわせて確かめる必要があります。

実際に起きたら、早めに弁護士へ

倒産の手続きでは、債権の届け出の期限など、決まった期間の中で動く必要があります。裁判所は中立の立場のため、倒産手続きの申立てなどの相談には応じられないと案内しています。JFAも、法的な手段を考えるときは弁護士への相談が適切としています。契約書と、本部から届いた通知を持って、早めに相談しましょう。

身売り(M&A)や撤退のとき|契約の相手は変わるか

身売りのやり方によって、契約の相手が変わるかどうかが違います。株式譲渡なら本部の会社そのものは変わらず、契約は原則そのまま続きます。事業譲渡なら、契約をほかの会社に移すには、原則として加盟店の承諾が必要です。会社分割では、分割の契約や計画に従って、ほかの会社にまとめて引き継がれます。

株式譲渡|会社は同じ、方針は変わりうる

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、株式譲渡では株主が変わるだけで会社の組織はそのまま引き継がれ、第三者との契約も原則として続くと説明しています。契約の相手は同じでも、新しい株主のもとで経営方針や条件が見直されることはありえます。同ガイドラインは、賃貸借契約などに、株主が変わったときの扱いを定めた条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)がある場合は注意が必要としています。フランチャイズ契約にも同じような条項がないか、確かめておきましょう。

事業譲渡|契約を移すには原則として加盟店の承諾が必要

同ガイドラインは、事業譲渡では契約関係を一つひとつ、相手の同意を取り付けて切り替えていくと説明しています。民法も、契約上の地位を第三者に譲る合意をし、契約の相手方がそれを承諾したときに、地位が移ると定めています(民法第539条の2、2020年4月施行)。ただし、契約書に、本部が地位を譲ることを前もって認める条項が入っていることもあるため、加盟前に読んでおきましょう。

会社分割|まとめて引き継がれる

会社分割は、会社法の手続きで、事業に関する権利と義務の全部または一部を、ほかの会社や新しくつくる会社にまとめて引き継がせる方法です(同ガイドライン)。どの契約が引き継がれるか、引き継いだあとの条件はどうなるかを、本部の説明や通知で確かめ、分からなければ弁護士に相談しましょう。

撤退|まず契約書の「終わり方」を確かめる

本部がフランチャイズ事業そのものをやめる場合、契約がどう終わるかは、主に契約書の終了・解約の条項によります。契約が終わったあとに、同じような商売を一定期間してはいけない競業禁止の約束が残るかどうかも大切です。JFAは、競業禁止や守秘義務が契約終了後も一定期間続くとされている場合が多いとしています。解約の一般的な流れはフランチャイズの解約・中途解約の流れで解説しています。

うなぎのフランチャイズで実際にあった本部のM&Aについては、「鰻の成瀬」M&Aで考えるうなぎフランチャイズの選び方で取り上げています。

加盟の条件を、契約の前に確かめたい方へ

猫家FCは加盟金150万円(保証金込み)、ロイヤリティ売上の4%(最初の3店舗は3%)。
物件・設備費は別途です。加盟条件を確かめたうえで、ご検討ください。

商標・仕入れ・システムはどう続くか

商標(お店の名前やロゴ)は本部の財産なので、本部の倒産や身売りで持ち主が変わることがあります。仕入れやシステムを本部に頼っているほど、止まったときの影響は大きくなります。どれも「だれの名義か」「止まったら代わりはあるか」を、加盟前に確かめておくことが大切です。

商標|登録と使用許諾のようすを確かめる

JFAは、加盟を考えるときは、本部の商標が登録され、法的に守られているかを必ず確かめるよう呼びかけています。商標の登録は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で無料で調べられます。

加盟店が商標を使う権利は、商標法では「通常使用権」と呼ばれます。特許庁は、特許の通常実施権には登録がなくても新しい特許権者に対抗できるしくみ(当然対抗制度)を入れた一方、商標の通常使用権が第三者に対抗するには、これまでどおり登録が必要だとしています。本部が商標をほかの会社に売った場合に、使用の許諾がどう扱われるかは、契約と登録のようすで変わるので、弁護士に確かめましょう。

仕入れ|本部以外から買えるか

食材や資材を本部から仕入れる、または本部が決めた業者から仕入れる契約では、本部が倒産すると仕入れが止まるおそれがあります。加盟前に、本部以外から仕入れてよい場合があるか、同じ品質のものを手に入れる方法があるかを聞いておきましょう。仕入れのルートの考え方はうなぎの仕入れルート完全ガイドでも紹介しています。

システム・アカウント|名義とデータ

レジのシステム(POS)、予約や注文のシステム、ホームページ、SNS、地図サービスのお店の情報、デリバリーサービスの店舗アカウントなどが、本部の名義か、加盟店の名義かを確かめます。本部の名義の場合、本部の倒産や撤退で使えなくなったり、売上やお客さまのデータを持ち出せなかったりすることがあります。

加盟前に確かめること|書面・契約・仕入れ先

本部の財務は法定開示書面で、倒産・身売りのときの扱いは契約書で、仕入れやシステムの代わりは本部への質問で確かめます。次の表を、面談や説明会のときのチェックリストとして使ってください。

どこで確かめるか確かめること
法定開示書面直近3事業年度の貸借対照表・損益計算書、加盟店の店舗数の推移(新規・解除・更新されなかった数)、訴訟の件数
契約書本部が契約上の地位を譲れる条項、本部の倒産・解散・事業の終了のときの扱い、保証金を返す時期と条件、契約終了後の競業禁止
商標だれの名義で登録されているか(J-PlatPat)、使用の許諾の範囲
仕入れ本部以外から仕入れられるか、代わりの方法
物件・設備賃貸借やリースの契約がフランチャイズ契約と連動していないか
システムレジ・予約・デリバリー・SNSなどの名義と、データを持ち出せるか

中小小売商業振興法の対象になる本部は、契約の前に、本部の直近3事業年度の貸借対照表と損益計算書などを書いた書面を渡し、説明しなければなりません(中小企業庁)。書面の読み方はフランチャイズの法定開示書面とはで解説しています。JFAは、公開している情報開示書面について、有価証券報告書や商業登記簿を調べるなど、総合的に情報を集めて判断するよう呼びかけています。契約書の条項の読み方はフランチャイズ契約で確認すべき10のチェックポイントで整理しています。

猫家FCの場合

猫家は、千葉県四街道市にある関東風(蒸してから焼く)のうなぎ屋です。猫家FCの加盟金は150万円(保証金込み)で、物件・設備費は別途です。ロイヤリティは売上の4%(最初の3店舗はモデルケースとして3%)です。うなぎ屋に必要なことは研修とマニュアルでお教えし、うなぎの仕入れは本部が担います。まだ加盟店はなく、最初の3店舗を募集しています。

保証金の扱いや契約の条件など、この記事で挙げた点で気になることは、フォームからご相談のうえ、面談で確かめてください。

まずは、お気軽にご相談ください

猫家FCは自分のうなぎ屋を繁盛させたい方を募集しています。
加盟条件について、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

本部が倒産したら、フランチャイズ契約はすぐになくなりますか?
すぐに自動でなくなるとは限りません。破産では破産管財人が、民事再生では本部の側が、原則として契約を続けるか解除するかを選べます。契約書に倒産のときの定めがあることもあるので、内容を確かめ、弁護士に相談してください。
本部が倒産したら、保証金は返ってきますか?
全額戻るとは限りません。保証金を返してもらう権利は、原則としてほかの債権者と同じ立場で扱われ、配当や再生計画で決まった割合でしか戻らないことがあります。本部に払うお金がある場合は、差し引き(相殺)できることもあります。
本部が身売りされたら、契約はどうなりますか?
株式譲渡なら本部の会社は同じで、契約は原則そのまま続きます。事業譲渡で契約をほかの会社に移すには、原則として加盟店の承諾が必要です(民法第539条の2)。ただし、経営方針や条件が見直されることはあります。
お店の名前(商標)は、そのまま使えますか?
商標は本部の財産なので、倒産や身売りで持ち主が変わることがあります。特許庁は、商標の通常使用権が第三者に対抗するには登録が必要だとしています。契約と登録のようすを確かめ、弁護士に相談しましょう。
加盟前に何を確かめればいいですか?
法定開示書面の財務と加盟店数の推移、契約書の地位の譲渡・契約の終わり方・保証金の返還の条項、商標の名義、仕入れの代わりがあるか、物件・設備・システムの契約の名義です。