飲食店の創業計画書の書き方
日本政策金融公庫の様式を欄ごとに解説【2026年版】
この記事の結論
- 創業計画書は、公庫の様式の10の欄に沿って「誰に、何を、いくらで売り、どう返すか」を根拠つきで書く書類です。
- 飲食店の売上は「客単価×席数×回転数×営業日数」で計算し、原価・人件費・家賃などの経費と利益を月平均で示します。
- FCに加盟する場合も、本部のモデル数値をそのまま写さず、自分の物件・営業時間・人員の条件で計算し直します。
日本政策金融公庫(以下、公庫)に開業資金の融資を申し込むときは、「創業計画書」を出します。様式は公庫のホームページからダウンロードでき、欄に沿って書くと、面談で話す内容を前もって整理できます。本記事では、公庫の様式と飲食店の記入例(2026年10月時点で公式サイトに掲載のもの)をもとに、各欄に何を書けばよいかを飲食店の例で説明します。融資制度そのものの選び方は飲食店開業の資金調達ガイドをご覧ください。
目次
1. 創業計画書とは何か(様式の10の欄) 2. 創業の動機・略歴・取扱商品・従業員・取引先の書き方 3. 借入の状況と「必要な資金と調達方法」の書き方 4. 「事業の見通し」の書き方(売上・経費・利益の根拠) 5. フランチャイズに加盟する場合の本部資料の使い方 6. 猫家FCの場合 7. よくある質問(FAQ)創業計画書とは何か(様式の10の欄)
創業計画書は、これから事業を始める人が、事業の計画を公庫に伝えるための書類です。公庫の様式には「ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」と書かれており、借入申込書に添えて出します。自分で作った計画書を代わりに出してもよいとされていますが、自分で作る場合も様式と同じ項目を入れておくと、面談で話を進めやすくなります。
| 様式の欄 | 飲食店で書くことの例 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | なぜこの業態・この場所で開くのか |
| 2 経営者の略歴等 | 飲食店での担当業務・役職・身につけた技能、資格、営業許可の申請状況 |
| 3 取扱商品・サービス | メニュー、客単価、営業時間・定休日、強み、ターゲットと集客、競合 |
| 4 従業員 | 3か月以上続けて雇う予定の人数(家族・パートの内訳) |
| 5 取引先・取引関係等 | お客さまの支払い方法、仕入れ先と支払い条件、給与の締め日・支払日 |
| 6 関連企業 | 本人や配偶者が経営している会社があれば記入 |
| 7 お借入の状況 | 住宅・車・カードなどを含めた今の借入れ |
| 8 必要な資金と調達方法 | 内装・厨房機器・保証金などの設備資金と運転資金、その集め方 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 創業当初と軌道に乗った後の売上・原価・経費・利益と、その根拠 |
| 10 自由記述欄 | アピールしたい点、悩み、ほしいアドバイス |
公庫のホームページには、様式(PDF・Excel)のほか、洋風居酒屋の記入例、月別収支計画書とその記入例、創業計画書セルフチェックリスト、書き方の動画がそろっています。申し込みのときは、創業計画書のほか、設備資金を申し込むなら見積書、飲食店のように許可が必要な事業なら許認可証なども用意します。
創業の動機・略歴・取扱商品・従業員・取引先の書き方
欄1〜5では、「この人がこの店を開けば続けられそうだ」と伝わる事実を書きます。公庫のセルフチェックリストが確かめるのは、創業への熱意と経緯、担当した業務や実績、身につけた資格やスキル、誰に・何を・いくらで売るか、強み、ターゲットに合った売り方、競合や近くの店の状況、入金や支払いのタイミングです。
1 創業の動機
「自分の店を持ちたい」だけでなく、なぜこの業態で、なぜこの場所なのかを、これまでの経験とつなげて書きます。たとえば「勤め先で店長として売上と仕入れを任され、運営に自信がついた」「なじみのある地域で、条件の合う物件が見つかった」のように、具体的なきっかけを入れると伝わります。
2 経営者の略歴等
様式には「勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載」とあります。飲食店なら、ホール・調理のどちらを何年担当したか、仕込み・発注・シフト作成・売上管理を任されたかまで書きます。取得資格、許認可(飲食店営業許可の申請中なども)、過去の事業経験の有無もこの欄です。飲食店の経験がない場合は、前職で身につけた接客・管理・数字の経験と、開業までにどう学ぶかを書きましょう。
3 取扱商品・サービス
主なメニューを3つまで、売上に占める割合(売上シェア)とあわせて書きます。飲食店は、客単価・営業時間・定休日・月の営業日数を書く欄があります。店内・テイクアウト・デリバリーを組み合わせるなら、それぞれの割合も書いておくと、9の数字とつながります。セールスポイント、販売ターゲットと集客の方法、近くの競合店や人通りなど「自社を取り巻く状況」は、実際に現地を見て調べたことを書きます。
4 従業員・5 取引先・取引関係等
従業員は、創業時に3か月以上続けて雇う予定の人数を書き、家族とパートの内訳も入れます。取引先の欄では、販売先(一般のお客さまの現金・キャッシュレスなど)と仕入れ先について、割合と締め日・支払日などの条件を書きます。公庫の記入例には「販売先・仕入先との結びつきがあれば記入」とあります。デリバリーサービスを使う場合は入金のサイクルが会社ごとにちがうので、飲食店がUber Eats・出前館に出店する流れで確かめておきましょう。
借入の状況と「必要な資金と調達方法」の書き方
欄7には今ある借入れをすべて、欄8には開業に必要なお金の中身と、その集め方を書きます。欄8は、左の「必要な資金」の合計と、右の「調達の方法」の合計を一致させます。金額には見積書などの裏づけをつけます。
7 お借入の状況
事業の借入れだけでなく、住宅・車・教育・カードなどの借入れも、借入先、残高、年間の返済額を書きます(法人の場合は代表者の借入れ)。事業以外の借入れも書く欄なので、書き漏れがないようにしましょう。
8 必要な資金と調達方法
設備資金には、店舗の内外装工事、厨房機器、什器・備品、物件の保証金などを、見積先と金額つきで書きます。記入例では見積書の添付を求めていて、すでに払ったものは領収書や請求書をつけます。運転資金には、開業直後の仕入れや家賃・給与などの支払いにあてるお金を書きます。セルフチェックリストには、開業後の赤字を補う半年程度の運転資金を検討しているか、という項目があります。
調達の方法は、自己資金、親や知人からの借入れ(内訳と返済方法)、公庫からの借入れ、ほかの金融機関からの借入れに分けて書きます。セルフチェックリストは「自己資金が少なく、借入依存の資金調達計画になっていませんか」と問いかけています。費用の内訳は飲食店の開業資金はいくら必要か、自己資金の考え方はうなぎ屋開業の自己資金はいくら必要かで詳しく紹介しています。
飲食店は「生活衛生関係」の事業
公庫の生活衛生貸付は、飲食店営業も対象です。生活衛生関係の事業を営む方が申し込む場合、振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員は組合の「振興事業に係る資金証明書」、それ以外の方は設備資金の申込額が500万円をこえると都道府県知事の「推せん書」が必要です。どの制度で申し込むかは、事前の相談で確かめましょう。
「事業の見通し」の書き方(売上・経費・利益の根拠)
欄9には、「創業当初」と「1年後または軌道に乗った後」の2つの時点で、月平均の売上高・売上原価・経費・利益を書き、右側に計算の根拠を書きます。数字だけを書くのではなく、根拠をそえることが大切です。公庫のセルフチェックリストも、計算根拠をもって売上と原価を予測しているか、経費に漏れがないか、利益から借入れの返済ができるかを確かめるよう求めています。
| 項目 | 計算のしかた | 根拠の例 |
|---|---|---|
| 売上高 | 客単価×席数×回転数×営業日数(昼・夜、店内・テイクアウトなどに分ける) | メニューの値段、物件の席数、勤め先での経験、近くの店の観察 |
| 売上原価(仕入高) | 売上高×原価率 | メニューごとの原価計算、仕入れ先の見積もり |
| 人件費 | 人数×時給×時間など(個人営業は事業主本人の分を含めない) | 出店する都道府県の最低賃金、シフト表 |
| 家賃 | 契約予定の月額 | 物件の募集条件・契約書 |
| 支払利息 | 借入残高×年利÷12か月 | 借入れの予定額と利率 |
| その他 | 水道光熱費、広告費、手数料など | 見積もり、契約条件 |
売上は「客単価×席数×回転数」で
公庫の参考資料では、飲食店などのサービス業の売上は「客単価×設備単位数(席数)×回転数」で求める方法が示されています。昼と夜で客単価や回転数がちがうなら分けて計算し、テイクアウトやデリバリーは「1日の販売数×平均単価×営業日数」のように別の行にします。数字はどれもなぜその数字なのかを一言そえます。
原価率は自分のメニューで計算する
公庫の参考資料は、売上原価を「売上高×原価率」で求め、原価率は業種や商品でちがうので、業界平均をもとに自分の販売戦略を加えて決めるよう案内しています。業界の数字を確かめるなら、公庫の総合研究所が出している「小企業の経営指標調査」(2025年度調査の飲食店・宿泊業は2026年8月に掲載)が参考になります。ただし、平均はあくまで目安なので、自分のメニューと仕入れ値で計算した原価率を根拠にしましょう。
人件費・利益の考え方
人件費の欄には、個人営業の場合、事業主本人の分は含めません(家族に払う分は含めます)。そのかわり、公庫の記入例にあるとおり、利益の中から所得税などの税金や借入れの元金の返済、個人なら自分の生活費をまかなうことになります。利益から返済と生活費を引いても赤字にならないかを確かめてください。毎月いくら売れば黒字になるかは、うなぎ屋の損益分岐点の考え方で計算できます。アルバイトの時給は、出店する都道府県の最低賃金(厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できます)をもとにします。
10 自由記述欄
自由記述欄には、アピールしたい点のほか、事業を始めるうえでの悩みや、ほしいアドバイスも書けます。様式の最後には、経験や事業内容がわかる計画書など参考になる資料があれば一緒に出してほしいとあります。メニュー表の案や物件の図面、月別収支計画書などを添えると、話が伝わりやすくなります。
フランチャイズに加盟する場合の本部資料の使い方
フランチャイズ(FC)に加盟して開業する場合も、創業計画書を書くのは加盟する本人です。本部の資料は参考になりますが、本部のモデル数値をそのまま写すのではなく、自分の物件・営業時間・人員の条件で計算し直すことが大切です。公庫の面談では、資金の使いみちや事業計画について話を聞かれるので、計画の中身を自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
モデル数値と「予想売上」はちがう
公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインは、本部が予想売上や予想収益を示す場合は、似た環境にある既存店の実績など根拠のある事実と、合理的な計算方法にもとづく必要があり、その根拠を加盟希望者に示す必要があるとしています。また、既存店の平均などから作ったモデル収益や収益シミュレーションは、出店予定の店の予想ではないことがわかるように示すべきだとしています。本部の資料がどちらにあたるのかを確かめ、根拠となった店の立地や席数が自分の物件と近いかを見ましょう。
自分の条件で計算し直す項目
- 席数・営業時間・営業日数(物件と自分の働き方で決まる)
- 家賃・保証金(自分の物件の条件)
- 人件費(出店する都道府県の最低賃金、自分が店に立つ時間。最低賃金は2026年度の最低賃金と飲食店の人件費を参照)
- ロイヤリティ(売上に連動するなら、売上の見込みに合わせて経費に入れる)
- 加盟金・研修期間中の生活費(必要な資金や自己資金の計画に入れる)
本部の資料は、根拠の説明として参考資料に添えられます。そのうえで、本部の数字と自分の計算がちがう部分は、なぜちがうのかを説明できるようにしておくと、面談で困りません。
猫家FCの場合
猫家は、千葉県四街道市にある関東風(蒸してから焼く)のうなぎ屋です。猫家FCで開業する場合、創業計画書には次のように書き分けます。まだ加盟店はなく、最初の3店舗を募集している段階なので、加盟店の実績値はありません。売上や経費は、ご自身の物件と営業の条件で計算してください。
- 必要な資金:加盟金150万円(保証金込み)。物件・設備費は別途なので、見積もりをとって設備資金に書く
- 経費:ロイヤリティは売上の4%(最初の3店舗はモデルケースとして3%)
- 取引先:うなぎの仕入れは本部が担う
- 取扱商品:店内でのご提供に加えて、テイクアウトとデリバリーサービス(Uber Eats・出前館など)も取り入れているので、売上を分けて計算する
- 客単価:値段はお店ごとに自分で決められるので、自分で決めた値段で計算する
うなぎ屋に必要なことは研修とマニュアルでお教えするので、料理の経験がない方も始められます。候補地は、物件の条件を見ながらいっしょに考えます。
まずは、お気軽にご相談ください
猫家FCは自分のうなぎ屋を繁盛させたい方を募集しています。
加盟条件について、まずはお気軽にご相談ください。