開業ガイド 物件契約 2026年版 2026年10月17日

飲食店の店舗の賃貸借契約で確かめること
普通借家と定期借家・保証金・原状回復【2026年版】

この記事の結論

  • 契約書では、普通借家か定期借家か、保証金と償却、原状回復の範囲、解約予告、用途や営業時間・看板の決まりを確かめます。
  • 定期借家は期間が終わると更新なしで終わります。借り手から途中で解約できるかは、中途解約の特約しだいです。
  • 国土交通省の原状回復ガイドラインは住宅向けです。店舗でどこまで戻すかは、契約書の条項と特約で確かめます。

飲食店の物件は、立地や家賃だけで決めると、あとから「更新できなかった」「退去のときに思わぬ費用がかかった」「看板や営業時間に決まりがあった」と気づくことがあります。こうした多くは、契約書にあらかじめ書かれています。本記事では、店舗の賃貸借契約(建物を借りる契約)で確かめたい条項を、国土交通省や法務省などの公的な資料をもとに、順番に整理します。物件の探し方や居抜きの判断は別の記事にまとめているので、ここでは「契約書の読み方」に絞ります。

最初に確かめる「普通借家」か「定期借家」か

最初に確かめるのは、その契約が「普通借家契約」か「定期借家契約」かです。普通借家は、大家さん(貸す人)に正当な理由(正当事由)がなければ更新を断れない契約です。定期借家は、決めた期間が終わると更新されずに終わる契約です。どちらなのかで、そのお店で長く営業を続けられるかが大きく変わります。

どちらも借地借家法(建物や土地を借りるときのルールを定めた法律)にもとづく契約です。国土交通省の資料(令和6年11月)をもとに、主な違いを表にまとめます。

項目普通借家契約定期借家契約
契約のしかた書面でも口頭でも成立(トラブルを防ぐため契約書をつくるのが望ましい)書面での契約に限る(電磁的記録も同じ扱い)。契約書とは別の書面で、更新がないことを前もって説明する
更新正当事由がない限り更新される期間が終わると更新されずに終わる(双方が合意すれば再契約はできる)
1年未満の契約期間の定めがない賃貸借とみなされる1年未満の契約も有効
賃料の増減増額・減額を求めることができる(増額しない特約だけは有効)増額・減額とも、特約で決めた内容に従う
借り手からの途中解約中途解約の特約があれば、その定めに従う店舗の場合は、中途解約の特約があれば、その定めに従う

※国土交通省「定期建物賃貸借契約」(令和6年11月)、「定期借家制度」パンフレットをもとに作成。正当事由は、大家さんと借り手それぞれが建物を使う必要性、これまでの経過、建物の利用状況と現況、立退料などの申し出を総合的に考えて判断されます。

定期借家なら「事前説明の書面」があるか

定期借家では、大家さんが借り手に対して、契約書とは別の書面で「この契約は更新がなく、期間の満了で終わる」ことを前もって説明しなければなりません。国土交通省の資料では、この説明をしなかった場合や内容に誤りがあった場合、更新がないという定めは無効になり、普通借家として扱われると案内しています。不動産会社(宅地建物取引業者)が仲介するときは、重要事項の説明でもこの点が説明されます。契約書の題名だけでなく、説明の書面がそろっているかを確かめましょう。

定期借家は「期間」と「再契約」を見る

定期借家は、期間が来れば終わるのが原則です。再契約は、大家さんと借り手の両方が合意すればできますが、必ずできるとは限りません。内装や厨房設備にかけたお金を、その期間の中でまかなえるかを考えておきましょう。国土交通省のパンフレットでは、建物の建て替えや大規模な修繕の予定に合わせて定期借家を使う例も紹介されています。再契約の条件や、建物の今後の予定を契約前に聞いておくと安心です。

お金の条項:保証金・敷金と償却、更新料、連帯保証

お金の条項で確かめるのは、保証金・敷金の額と、退去のときにいくら戻るのか(償却の有無)、更新料、賃料が税込みか税抜きか、そして連帯保証の条件です。預けるお金は大きな金額になることもあるので、戻り方まで読んでおくことが大切です。

担保として預ける保証金は「敷金」として扱われる

2020年4月に施行された改正民法では、敷金を「いかなる名目によるかを問わず」、賃料などの支払いを担保する(万一のために預けておく)目的で借り手が大家さんに渡すお金と定めました。法務省のパンフレットでも、「保証金」という名目で賃料などの担保として預けたお金を例に説明しています。名目ではなく、担保のために預けたお金かどうかで決まるので、保証金が何のためのお金かを契約書で確かめましょう。さらに、敷金を返す義務は契約が終わって物件を返したときに生じ、返す額は預けた額から未払いの賃料などを差し引いた残りであることも明文化されました。

「償却」は戻らないお金と読む

店舗の契約では、「保証金のうち賃料○か月分を償却する」のように、退去のときに一定額を差し引く取り決め(償却、敷引きともいいます)が書かれていることがあります。この部分は、原状回復の費用とは別に戻らないお金として読む必要があります。償却が何に対して何か月分(何%)か、契約年数で変わるか、原状回復費用と別に引かれるかを確かめましょう。

更新料・賃料の発生日・消費税

更新料があるか、ある場合はいくらで、何をもとに計算するか(新しい賃料の○か月分など)を確かめます。賃料がいつから発生するかも大切です。内装工事の期間も賃料がかかるのか、かからない期間があるのかで、開業までの資金が変わります。また、国税庁の案内では、消費税が非課税になるのは住宅の貸付けで、店舗と住宅が一緒になった建物でも非課税は住宅部分だけです。店舗の賃料・共益費が税込みか税抜きかを確かめておきましょう。

連帯保証人には「極度額」が必要

個人が連帯保証人になる場合、賃料など将来の不特定の支払いをまとめて保証する契約(根保証)には、保証する上限の金額(極度額)を書面で定めないと無効になります。これも2020年4月施行の改正民法のルールです。また、テナント料のように事業のための支払いについて保証人を頼むときは、頼む側(借り手)が自分の財産や収支の状況などを保証人に伝えなければなりません。家族などに保証人を頼む場合は、契約書に極度額が「○○円」と書かれているかも確かめましょう。

退去の条項:原状回復・スケルトン返し・造作譲渡

退去の条項では、退去するときにどこまで元に戻すのか(原状回復)、内装や設備をすべて取り除いて建物の骨組みだけの状態に戻す「スケルトン返し」が必要か、居抜きで引き継いだ設備をどう扱うかを確かめます。ここがあいまいなまま契約すると、出るときに大きな費用がかかることがあります。

民法の基本と、住宅向けガイドラインの関係

改正民法では、借り手は借りたあとに生じた損傷を元に戻す義務を負う一方で、ふつうに使っていて生じた傷み(通常損耗)や年数による変化(経年変化)は対象にならないことが明記されました。よく知られている国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間賃貸住宅の退去を想定したものです。店舗の契約にそのまま当てはまるとは限らないので、店舗では契約書の原状回復の条項と特約に、何がどこまで書かれているかを確かめることが基本になります。

スケルトン返しは費用の見通しを立てる

契約書に「スケルトンにして返す」と書かれていれば、自分が入れた内装や設備を取り除く工事費用がかかります。居抜きで入った場合でも、前の借り手が入れた造作まで撤去を求められる書き方になっていないかを確かめましょう。入居するときの状態を、写真や図面で日付とともに残しておくと、退去のときの話し合いがしやすくなります。

造作譲渡(居抜き)は「だれの物か」を一覧にする

居抜き物件では、前の借り手が残した内装や厨房設備(造作)を、前の借り手から引き継ぐ「造作譲渡」の契約を結ぶことがあります。これは大家さんとの賃貸借契約とは別の契約です。確かめたいのは次の点です。

居抜き物件そのものの向き・不向きや、確かめたい設備の項目は、うなぎ屋を居抜き物件で開業するで詳しく解説しています。

物件の条件から相談したい方へ

猫家FCは加盟金150万円(保証金込み)、ロイヤリティ売上の4%(最初の3店舗は3%)。
物件・設備費は別途です。候補地は物件の条件を見ながら、いっしょに考えます。

使い方の条項:用途・営業時間・におい・看板

使い方の条項では、契約書の「使用目的」に、自分が始める飲食店の業種がはっきり書かれているかを最初に確かめます。あわせて、営業時間、におい・煙・音の決まり、看板を出せる場所を確かめます。決まりに合わない使い方をすると、契約違反として問題になるおそれがあります。

用途・業種の制限

使用目的が「飲食店」とだけ書かれているか、「喫茶」「物販」のように範囲がしぼられているかで、できることが変わります。ビルによっては、煙やにおいの多い業種を断っていたり、扱える料理を決めていたりすることもあります。あとから業態を変えたいときに大家さんの承諾が必要かも確かめましょう。

なお、保健所の営業許可は、お店が衛生上の施設の基準に合っていることを認めるものです。大阪府の案内でも、営業許可は土地利用や建築基準、消防などに合っていることを認めるものではないと説明しています。用途地域や建物の用途は、契約とは別に確かめが必要です。立地や用途地域の考え方はうなぎ屋の立地選びを参考にしてください。

営業時間・におい・煙・音

ビルの開いている時間や、夜の営業、搬入できる時間、共用の通路やごみ置き場の使い方は、契約書のほか、ビルの管理規約や使用細則で決まっていることがあります。厨房の排気をどこから外へ出すか、室外機をどこに置くかは、においや音の苦情にもつながります。排気や室外機の設置場所と、その工事を誰の費用で行うか、苦情が出たときの対応の決まりを、契約前に確かめておきましょう。内装工事に大家さんの承認が必要か、工事のルールがあるかもあわせて確かめます。

看板

看板は、出せる場所(建物の壁、袖看板、置き看板など)、使用料、退去のときの撤去を契約書で確かめます。そのうえで、契約で大家さんが了解していても、屋外の看板は都道府県や指定都市・中核市などが屋外広告物法にもとづいて定める条例の規制を受け、地域によっては自治体の許可が必要です(国土交通省の案内)。看板の見せ方はうなぎ屋の外装・看板づくりでも解説しています。

期間と解約の条項:更新・解約予告・契約前のチェック表

期間と解約の条項では、契約期間、更新のしかた、借り手から解約するときの予告期間と違約金を確かめます。とくに、途中でお店を閉じたくなったときに何か月前に知らせればよいか、残りの期間の賃料を払う決まりがないかが大切です。

途中で解約できるかは「特約」しだい

国土交通省の資料では、普通借家でも定期借家でも、借り手からの途中解約は「中途解約に関する特約があれば、その定めに従う」と整理されています。法律で借り手からの途中解約の申し入れが認められているのは、床面積200㎡未満の住まいで、転勤や療養などやむを得ない事情がある場合の定期借家です。店舗では、中途解約の特約があるか、予告は何か月前か、違約金はいくらかを必ず確かめましょう。

定期借家の終了通知と再契約

定期借家で期間が1年以上の場合、大家さんは期間が終わる1年前から6か月前までのあいだに、契約が終わることを借り手に知らせる必要があります。再契約するときは、更新ではなく新しい契約として、事前説明などの手続きを最初からやり直します。賃料の見直しについては、普通借家では特約にかかわらず増額・減額を求められます(増額しない特約だけは有効)が、定期借家では特約で決めた内容に従います。

契約してから開業するまでの順番

飲食店営業の許可は、施設が条例の基準に合っていることを保健所が確かめて出されます。千葉県市川保健所の手引きでは、施設の工事に取りかかる前に図面を持って相談するよう案内しています。賃料が発生する日、工事の期間、保健所への相談と検査の時期を一つの予定表にしておくと、空家賃を払う期間を短くできます。必要な届出の全体は飲食店開業に必要な届出・許可の一覧をご覧ください。

契約前のチェック表

条項確かめること
契約の種類普通借家か定期借家か。定期借家なら、契約書とは別の事前説明の書面があるか
契約期間・更新期間の長さ、更新のしかた。定期借家なら再契約の条件と建物の今後の予定
賃料・共益費金額、税込みか税抜きか、賃料が発生する日、賃料の見直しの決まり
保証金・敷金金額、償却の有無と計算のしかた、返す時期、原状回復費用との関係
更新料あるか、いくらか、何をもとに計算するか
原状回復戻す範囲、スケルトン返しが必要か、入居時の状態の記録
造作譲渡大家さんの了解、引き継ぐ設備の一覧と持ち主、退去時の扱い
使用目的自分の業種・業態が書かれているか、変更に承諾が必要か
営業時間・におい・音ビルの決まり、排気や室外機の設置場所、工事の費用負担
看板設置場所、使用料、撤去の決まり(条例の許可は別に確認)
解約中途解約の特約、予告期間、違約金
連帯保証個人が保証人なら、極度額が書面に書かれているか

わからない条項は契約前に聞く

契約書の言葉で意味がわからないところは、署名する前に不動産会社や大家さんに確かめ、答えをメールなど記録に残る形で受け取っておきましょう。金額が大きい契約や特約が多い契約は、弁護士などの専門家に見てもらう方法もあります。

猫家FCの場合

猫家FCでは、候補地(物件)は物件の条件を見ながら、本部といっしょに考えます。候補の物件の契約書を読むときにも、本記事の確認ポイントを役立ててください。

猫家は、千葉県四街道市にある関東風(蒸してから焼く)のうなぎ屋です。店内でのご提供に加えて、テイクアウトとデリバリーサービス(Uber Eats・出前館など)も取り入れているので、席数が少ない小さなお店でも売上を確保しやすい形です。加盟金は150万円(保証金込み)で、物件・設備費は別途かかります。店舗の保証金や家賃など、物件の契約にかかるお金も加盟金とは別です。ロイヤリティは売上の4%(最初の3店舗はモデルケースとして3%)です。うなぎ屋に必要なことは研修とマニュアルでお教えし、うなぎの仕入れは本部が担います。加盟の条件は猫家FCのよくある質問にもまとめています。

まずは、お気軽にご相談ください

猫家FCは自分のうなぎ屋を繁盛させたい方を募集しています。
加盟条件について、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

普通借家と定期借家は、どう見分けますか?
契約書に「更新がなく、期間の満了により終了する」旨が書かれているか、契約書とは別の事前説明の書面があるかで見分けます。国土交通省の資料では、定期借家は書面での契約と事前説明が必要で、説明をしなかった場合は更新がない定めが無効になり、普通借家として扱われると案内しています。
保証金は、いつ・いくら戻りますか?
賃料などの担保として預けた保証金は、改正民法では、契約が終わって物件を返したときに、預けたお金から未払いの賃料などを差し引いた残りを返すのが基本です。ただし契約書に償却(退去時に一定額を差し引く取り決め)や原状回復費用の精算が書かれていれば、その分は戻りません。計算のしかたを契約前に確かめましょう。
国土交通省の原状回復ガイドラインは、店舗にも使えますか?
このガイドラインは、民間賃貸住宅の退去をめぐるトラブルを防ぐために国土交通省が示したもので、住宅向けです。店舗でどこまで戻すかは、契約書の原状回復の条項と特約で確かめ、入居時の状態を写真や図面で残しておくと安心です。
定期借家の店舗は、途中で解約できますか?
店舗の場合、借り手から途中で解約できるかは中途解約の特約しだいです。法律で借り手からの途中解約の申し入れが認められているのは、床面積200㎡未満の住まいで、やむを得ない事情がある場合です。特約の有無、予告期間、違約金を確かめましょう。
大家さんが了解すれば、看板は自由に出せますか?
契約で了解を得ていても、屋外の看板は都道府県や指定都市・中核市などの屋外広告物条例の規制を受け、地域によっては自治体の許可が必要です。契約書の決まりと条例の両方を確かめましょう。