飲食店に防火管理者は必要?
30人の数え方・甲種と乙種・講習と届出
この記事の結論
- 飲食店がある建物では、建物全体の収容人員が30人以上だと防火管理者が必要です(消防法第8条、施行令第1条の2)。
- 飲食店がある建物で延べ面積300㎡未満なら乙種でもよく、講習はおおむね5時間です。300㎡以上は甲種で、おおむね10時間です。
- 必要な建物ではテナントも防火管理者を選び、選任届と消防計画を消防署に出します。使用開始届は7日前まで(東京消防庁の例)。
飲食店に防火管理者が必要かどうかは、お店の席数ではなく、建物全体の収容人員で決まります。飲食店がある建物で、従業員とお客さまを合わせた収容人員が30人以上なら、建物の所有者もテナントも防火管理者を選びます。本記事では、消防法・消防法施行令・消防法施行規則の条文と、東京消防庁・日本防火・防災協会の案内(2026年10月時点)をもとに、収容人員の数え方、甲種と乙種のちがい、講習の時間と費用、テナントの場合、消防署への届出を順番に説明します。
目次
1. 防火管理者とは?どの法律で決まっている? 2. 飲食店に防火管理者が必要なのはどんなとき? 3. 収容人員はどう数える? 4. 甲種と乙種のちがいは? 5. 防火管理講習はどこで受ける?時間と費用は? 6. テナントで入るときはどうなる? 7. 消防署には何を届け出る? 8. 猫家FCで物件を探すときは? 9. よくある質問(FAQ) 10. 参考にした情報防火管理者とは?どの法律で決まっている?
防火管理者とは、建物の火災を防ぎ、火災が起きたときの被害を小さくするための業務を進める責任者です。消防法第8条は、多くの人が出入りする建物の「管理について権原を有する者」(管理権原者)に、資格のある人の中から防火管理者を定めて、防火管理の業務をさせるよう求めています。防火管理者が行うおもな業務は、消防法第8条と消防法施行令第3条の2に書かれています。
- 防火管理に係る消防計画をつくり、消防署に届け出る
- 消火・通報・避難の訓練をする
- 消火器などの消防用設備の点検と整備をする
- 火を使うことを監督する
- 避難や防火に必要な構造・設備を管理する
- 収容人員を管理する
東京消防庁の案内では、管理権原者の例として、建物の所有者や、テナントを借りて営業する人(法人なら代表取締役など)をあげています。貸しビルのテナント部分は、借りている人がその部分の管理権原者になります。防火管理の最終的な責任は管理権原者にあるので、テナントでお店を開くオーナーは、自分が管理権原者になると考えておきましょう。
飲食店に防火管理者が必要なのはどんなとき?
飲食店がある建物では、建物全体の収容人員が30人以上のときに防火管理者が必要です。消防法施行令第1条の2第3項は、飲食店(施行令別表第一(3)項ロ)など、不特定多数の人が出入りする用途がある建物について、収容人員30人以上を基準にしています。飲食店が入る雑居ビル(複合用途の建物。別表第一(16)項イ)も同じです。
| 建物の種類 | 防火管理者が必要になる収容人員 |
|---|---|
| 飲食店・店舗・ホテル・病院など、不特定多数の人が出入りする用途がある建物(特定用途) | 30人以上 |
| 自分で避難するのがとてもむずかしい人が入る社会福祉施設などがある建物 | 10人以上 |
| 事務所・共同住宅・学校・工場・倉庫などの用途だけの建物(非特定用途) | 50人以上 |
※消防法施行令第1条の2第3項、東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」をもとに作成。
判断はお店ごとではなく、建物全体で行います。東京消防庁は、防火管理者が必要な建物では「建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要」と案内しています。お店の席が少なくても、同じビルのほかのテナントと合わせて30人以上になれば、あなたのお店でも防火管理者を選びます。反対に、社会福祉施設などが入っていない建物で、建物全体の収容人員が30人に満たなければ、消防法第8条の防火管理者の義務はかかりません。ただし東京都のように、火災予防条例で対象を加えている地域もあります(東京消防庁の案内)。物件を決める前に、管轄の消防署に確かめましょう。
収容人員はどう数える?
飲食店の収容人員は、従業者の数と客席の人数を足して数えます。数え方は、消防法施行規則第1条の3で次のように決まっています。
- 従業者の数
- 固定式のいす席:いすの数(長いすは、正面の幅0.5mごとに1人。1未満のはしたは切り捨て)
- 固定式のいす席ではない客席の部分:床面積3㎡ごとに1人
計算の例(仮の数字)
カウンターに固定式のいすが8席、固定式のいす席ではない客席の部分が24㎡、従業者が3人のお店の場合:8人+(24㎡÷3㎡=8人)+3人=19人。このお店だけなら30人未満ですが、雑居ビルでは、同じ建物のほかの用途の部分もそれぞれ数えて合計します(施行規則第1条の3第2項)。
雑居ビルの場合、自分のお店の人数だけでは判断できません。建物全体の収容人員は、ビルの管理会社や管轄の消防署に確かめましょう。
甲種と乙種のちがいは?
防火管理者の資格には甲種と乙種があり、どちらでよいかは、おもに建物の延べ面積で決まります(消防法施行令第3条)。飲食店などがある建物で収容人員が30人以上のとき、延べ面積が300㎡以上なら甲種防火管理者、300㎡未満なら甲種か乙種の防火管理者を選びます。
| 項目 | 甲種 | 乙種 |
|---|---|---|
| 選べる建物(飲食店などがある建物) | 延べ面積に関係なく選べる | 延べ面積300㎡未満の建物 |
| 新規講習の時間(施行規則第2条の3) | おおむね10時間 | おおむね5時間 |
| 講習の日数(東京消防庁の案内) | 2日間 | 1日 |
| 再講習 | 収容人員300人以上の特定用途の建物などで選ばれている人は必要 | なし |
※消防法施行令第3条、消防法施行規則第2条の3、東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」「防火・防災管理講習 よくある質問コーナー」をもとに作成。
また防火管理者は、講習を終えているだけでなく、防火管理の業務をきちんと行える「管理的又は監督的な地位」にある人でなければなりません(施行令第3条)。名前だけの担当者ではなく、オーナーや店長など、お店をまとめる立場の人を選びましょう。
防火管理講習はどこで受ける?時間と費用は?
防火管理講習は、都道府県知事、消防本部(消防長)、または総務大臣の登録を受けた法人が行います(消防法施行令第3条)。東京都では東京消防庁が講習を行っています。また一般財団法人日本防火・防災協会も、会場で受ける講習(対面型)とオンラインの講習を行っています。
| 項目 | 東京消防庁 | 日本防火・防災協会 |
|---|---|---|
| 甲種 | 「防火・防災管理新規講習」として実施。会場で2日、またはオンライン講習+実技講習1日。教材費7,000円(オンラインで受けるときは、別に教材の配送代がかかる) | 会場で連続2日間、またはオンライン(受講時間10時間)。受講料8,000円 |
| 乙種 | 会場で1日。教材費2,500円 | 会場で1日、またはオンライン(受講時間5時間)。受講料7,000円 |
| 申し込み | 都内の消防署などの窓口、または電子申請(オンライン講習は電子申請だけ)。窓口で申し込む対面講習の締め切りは、講習の7日前まで | インターネットで申し込む |
| 受けられる人 | 東京都内(稲城市を除く)の建物などで防火管理者に選ばれる人。資格を取るだけが目的の人は受けられない | 中学校卒業程度以上の学力があり、日本語がわかる人 |
※東京消防庁「講習費用はいくら?」(2025年4月の講習からの教材費)、日本防火・防災協会の講習の案内(税込み)をもとに作成。どちらも2026年10月27日に確認。
東京消防庁の時間割では、乙種防火管理講習は午前9時から午後4時までの1日で、最後に効果測定と修了証の交付があります。日本防火・防災協会のオンライン講習は、期間内なら24時間いつでも、分けて受講できます。なお日本防火・防災協会は、2027年4月1日からの講習の受講料を改定し、甲種防火管理新規講習を9,000円、乙種防火管理講習を7,700円にすると発表しています。
どちらの講習を受けるべきかは、建物の用途・規模・収容人員などで変わるので、お店を管轄する消防署に確かめてから申し込みましょう。東京消防庁の案内では、講習の修了証に有効期限はありません。
テナントで入るときはどうなる?
ビルにテナントで入る場合も、建物全体で防火管理者が必要になれば、テナントのお店ごとに防火管理者を選びます。テナントを借りて営業する人は、お店の部分の管理権原者だからです(東京消防庁の案内)。ただし、お店の部分が小さいときは、次のような扱いがあります。
- テナントが入る(管理権原が分かれている)建物では、甲種が必要な大きさの建物でも、お店の部分だけで数えた収容人員が30人未満なら、乙種の講習を終えた人を防火管理者にできる(施行令第3条第3項、施行規則第2条の2の2)
- お店の部分の収容人員が30人未満で、店長などが遠くで勤務している、従業員がとても少ないなどの理由があるときは、消防署長が認めた場合に限り、防火管理者の業務を外部に委託できる(施行令第3条第2項、施行規則第2条の2、東京消防庁の案内)
- 管理権原が分かれている建物のうち、飲食店などがあって、地階を除く階数が3以上かつ収容人員が30人以上の建物(高さ31mを超える建物なども)では、建物全体をまとめる「統括防火管理者」を、管理権原者どうしが話し合って決める(消防法第8条の2、施行令第3条の3)
業務を委託した場合も、防火管理の最終的な責任は管理権原者にあります(東京消防庁の案内)。物件の契約前に、ビルの管理会社に「建物全体の収容人員」「延べ面積」「統括防火管理者がいるか」をたずね、管轄の消防署にも確かめておくと安心です。賃貸借契約で確かめることは、飲食店の店舗の賃貸借契約で確かめることで説明しています。
消防署には何を届け出る?
防火管理者を選んだら、管理権原者が遅滞なく、管轄の消防署に防火管理者の選任届出書を出します(消防法第8条第2項)。届出書には、講習の修了証など、資格を証明する書面を付けます(消防法施行規則第3条の2)。続いて防火管理者が、お店の消防計画をつくって届け出ます(施行令第3条の2)。飲食店で開業するときに消防署に出すおもな届出を、東京消防庁の例でまとめると次のとおりです。
| 届出 | だれが出す | いつまで |
|---|---|---|
| 防火対象物工事等計画届出書(内装の模様替えや間仕切りの変更などをするとき) | 工事をしようとする人 | 工事に着手する日の7日前まで |
| 火を使用する設備等の設置届出書(一定の大きさ以上の厨房設備などを置くとき) | 設備の設置を依頼した人 | 設置する7日前まで |
| 防火対象物使用開始届出書 | 実際に使う人(テナントで営業する人) | 使用を開始する日の7日前まで |
| 防火管理者の選任届出書(防火管理者が必要な建物) | 管理権原者 | 選任したら遅滞なく |
| 消防計画の作成届出書(防火管理者が必要な建物) | 防火管理者 | 選任後、消防計画をつくって届け出る |
※東京都火災予防条例第56条・第56条の2と東京消防庁の各届出の案内、消防法第8条、消防法施行令第3条の2をもとに作成。東京消防庁の場合、厨房設備は入力の合計が120kW以上のもの(下に向けて排気する方式は大きさに関係なく)が届出の対象で、固体燃料を使う炉も対象にあげています。ほかの地域では、その地域の火災予防条例と消防本部の案内を確かめてください。
開業までの消防の手続きは、東京消防庁の例では、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 物件を決める前に、建物全体の収容人員と延べ面積を、管理会社と管轄の消防署に確かめる
- 防火管理者が必要なら、甲種か乙種の講習を申し込んで受ける
- 内装の工事をするなら、着手の7日前までに工事等計画届出書を出す(東京消防庁の場合)
- 使用開始の7日前までに使用開始届出書を出し、使い始める前に消防署の検査を受ける(東京消防庁の場合。内容によって検査を省略する場合あり)
- 防火管理者の選任届出書と消防計画を出す
- 開業後は、消防計画にそって訓練や点検を続ける
飲食店などの防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行い、事前に消防署に通報します(消防法施行規則第3条第10項・第11項)。うなぎを焼く設備など厨房の機器の考え方はうなぎ屋の厨房設備と初期投資、保健所・税務署もふくめた開業の届出の全体は飲食店開業に必要な届出・許可の一覧をご覧ください。
猫家FCで物件を探すときは、何を確かめる?
防火管理者が必要かどうかは席数だけでは決まらないので、物件を探すときは、建物全体の収容人員、延べ面積、ほかのテナントの用途を確かめておきたいところです。猫家FCでは、お店を出す候補地を本部といっしょに考えます。そのうえで、候補の物件の消防の扱いは、管轄の消防署で確かめましょう。
猫家は、千葉県四街道市に本店がある、関東風(蒸してから焼く)のうなぎ屋です。店内でのご提供に加えて、テイクアウトとデリバリーサービス(Uber Eats・出前館など)も取り入れているので、席数が少ない小さなお店でも売上を確保しやすい形です。うなぎ屋に必要なことは研修とマニュアルでお教えし、うなぎの仕入れは本部が担います。
加盟金は150万円(保証金込み)で、物件・設備費は別途かかります。ロイヤリティは売上の4%(最初の3店舗はモデルケースとして3%)です。まだ加盟店はなく、最初の3店舗を募集しています。
よくある質問(FAQ)
参考にした情報
- e-Gov法令検索「消防法」(2025年6月1日施行の版):第8条(防火管理者)、第8条の2(統括防火管理者)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(2025年10月1日施行の版):第1条の2(防火管理者が必要な防火対象物)、第3条(資格)、第3条の2(責務)、第3条の3、別表第一
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(2026年6月26日施行の版):第1条の3(収容人員の算定)、第2条の2、第2条の2の2、第2条の3(講習時間)、第3条(消防計画・訓練)、第3条の2(選任届)
- 東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」:建物全体での判断、すべてのテナントでの選任、甲種・乙種の講習日数(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「「管理権原者」とは・「防火管理者」とは」:管理権原者の例とテナント部分の考え方(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火管理者の業務の委託について」:委託を認める場合の基準(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火管理講習・防災管理講習」:講習の種類、受講形式、申請の条件(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理講習(対面講習)」:窓口の申請場所、受付開始日と締切日、受講できる人(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理講習 よくある質問コーナー(講習費用について)」:教材費(令和7年4月の講習から)、オンライン受講の教材の配送代(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理講習 よくある質問コーナー(講習の時間割について)」:乙種防火管理講習の時間割(令和6年6月更新、2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理講習 よくある質問コーナー(再講習の受講期限について)」:甲種防火管理再講習の受講義務がある人(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理講習 よくある質問コーナー(修了証の有効期限について)」:修了証に有効期限はないこと(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書」:届出に添える書類、電子申請(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「新たにテナントを使用する皆様へ」:使用開始届・工事等計画届の期限、火災予防条例第56条・第56条の2(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「防火対象物使用開始届出書」:届出をする人、使用開始前の検査(2026年10月27日に確認)
- 東京消防庁「火を使用する設備等の設置(変更)届出書」:厨房設備・固体燃料を使う炉などの届出の対象と期限(2026年10月27日に確認)
- 日本防火・防災協会「防火・防災管理講習」:講習の種類・日数・受講時間・受講料、受講の対象、FAXによる申し込みの廃止のお知らせ(2025年8月1日)、「令和9年度実施からの防火・防災管理講習の受講料を改定します」(2027年4月1日からの受講料)(2026年10月27日に確認)